あなたの感情の引き金はどこにあるのでしょうか

トリガー

マーシャル・ゴールドスミス博士の著書「トリガー、自分を変えるコーチングの極意」(斉藤聖美訳)を紹介したいと思います。

この本は、人が行動や態度を改めることについて書いてあります。どんなに頭の良い人でも、自分で自分を改善するのは難しいものです。という私(頭はそれほど良くありませんが)も、多くのモチベーションや組織論、リーダーシップに関する本や記事を読んでいて「どうすればよいか」知っているのにかかわらず、悪い見本の通りの行動をしてしまう自分に気づいて本当に嫌になります。ではどうしたら「自分がなりたい自分になる」ことができるのでしょうか。

この本では、その答えをトリガー「引きかね」に焦点を当てて説明しています。ここで言うトリガーとは、私達にあらたな考えや行動をさせる刺激のことです。このトリガーは突然、不意にやってきて、時には人生を180度変えてしまうものもあるし、努力してきたことを一瞬でだめにしてしまう逆効果のトリガーもあります。

だいたいの人が、悪いところを指摘されれば、それを改善しようと(渋々であっても)努力します。しかし、これは簡単なことではありません。改善したい、良くしたいと思っても、なかなか始められなかったり、最後まで続けられなかったり、できたとしても定着するまでには至らないことが多いからです。変化を妨げる大きな問題の一つは、根本的に私達は「変わることがきらい」だということです。変化に抵抗しようとするトリガーがあります。これを取り除く必要があります。

また、口では改善したいといっても、本心からそう思わない人は、誰も変わることができないということです。またそう思っても、この世には軌道から外させるような様々なトリガーがあるので、あっという間に元に戻ってしまうことです。

代表的なトリガーには、何かをしないことを正当化するための信条?みたいなものがあります。たとえば、「時間はたっぷりある」、「今日は特別な日だからまた今度」、「少なくとも私はXXよりましだ」など15ほどのトリガーを本書では説明しています。どれもありそうな話ですが、マーシャルはそれよりも環境のからの影響が強いとしています。ここで言う環境は、私達のまわりにある私達に影響を与えるあらゆるもの、事、空気(雰囲気)です。たとえば、ボスから過大なノルマを与えられた社員が不正なことを犯してまでもノルマを達成してしまうのは、社員の環境がそうさせてしまったのです。自分のいる地位とか周りの目とかいろいろなことが、私達を時に悪い行動を起こさせてしまうのです。ではこのトリガーに私達は対抗できるのでしょうか。

ここでは「行動のトリガーとは、行動に影響を与える刺激」と定義しています。トリガーには、直接的なものと間接的なもの、内的なものと外的なもの、意識的なものと無意識的なものといろいろなものがあります。後押しするトリガーがあれば、やる気を削ぐトリガーもあります。生産的なトリガーがあれば、非生産的なトリガーもあります。

後押しするトリガーと生産的なトリガーは必ずしも同じではありません。後押しするトリガーは私達の欲しいものと関係し、生産的なトリガーは私達が必要なものへ導くとしています。本書では自分の立ち位置を、後押しすると同時に生産的なトリガー(欲しいし必要)、後押しするが非生産的なトリガー(欲しいが、必要ない)、生産的ではあるが後押しはしない(必要だが、欲しくない)、後押しをしないし非生産的(必要でもないし、欲しくもない)の4つに分けています。なにか達成できないときに、その状況をこの4つに分けてみることでその原因が分析できるというのです。

これを書いているのは日曜日で、いつもは軽くジョギングします。でも今日はやめました。その理由は、風が強かったとか、疲れているからといったことなのですが、ジョギングをするという目標にむかって後押しするトリガーもないのです。「まあ、いいか」と現状維持にあぐらをかいてしまうのです。でも、ジョギングをやめさせるようなトリガーもありません、つまり私にとってジョギングは、必要だが欲しくないものということになります。しかし、毎日行っている腹筋運動はやりました。これも必要だが欲しくないものですが、「習慣になっている」、「簡単にできる(服装を着替える必要がない)」、「あまり時間を取られない」というトリガーが行わせたということになります。

出典:マーシャル・ゴールドスミス著 「トリガー 自分を変えるコーチングの極意」