マーシャル・ゴールドスミスという名前を聞いてことがあるという方は、おそらく日本経済新聞出版社が出版している「コーチングの神様が教える「できる人」の法則」を読んだ人か、書店で見たことがある人ではないかと思います。この本の原題は「What Got You Here Won’t Get You There」なのですが、ラフに訳すと「あなたが今のポジションにしたものは、将来の成功を約束するものではないよ」といったところでしょうか。内容はいろいろなところで書かれているので、ここでは詳しくは書きませんが、中心は「(リーダーが抱える)20の悪い癖」だと思います。自分に当てはめても、また、自分の上司に当てはめてもあるある的なことが書かれています。興味がある方は、「リーダーが抱える20の悪い癖」で検索してみてください。

負けず嫌い

みなさんは負けず嫌いですか。競争社会ですから、多少、負けず嫌いの方が良いのかもしれません。リーダーであれば特にそうです。しかし、極端な負けず嫌いは困ります。勝たなくても良い時でも、議論で相手を言い負かしてしまうという時です。もしくは相手の話をさえぎって、自分の意見を述べます。そのような時、相手の気持ちを害してしまうようなこともあるかもしれません。これが20の悪い癖の最初の癖です。

いや」、「しかし」、「でも」で文章を始める

これはリーダーなくてもあるかもしれません。誰かが言ったことに対して「でも」とか「しかし」で返したことはありませんか。「それはとてもいいアイデアだと思います。でも・・・」と結局は相手の意見に賛成していないような言い方です。無意識にやってしまうことがあるのです。例えば相手が自分のことや身内のことをほめたとき、「ありがとう。でも実は・・・」と言わないでしょうか。謙遜なのかもしれませんが、それが良いことなのか考える必要があります。

フィードフォワード

おそらく皆さんもいろいろな場面でフィードバックを受けたことがあると思います。自分が実施した仕事のやり方や成果、人事評価などあります。その内容に不満を持ったことはありませんか。本当に自分のことを見ているのかとか、あまり仕事を一緒にしたことがない人が評価者となっているとか、いろいろありますよね。また、評価する人によって、甘めであったり、すべてネガティブであったり、根拠があいまいであったりするといった問題が考えられます。マーシャル博士はフィードバックがうまくいく質問は、「どうすればもっとよくなれるのだろう」であるとしてます。つまり、過去のことではなく、将来のこと、それもお互いに利益になる提案をしてもらうことが最良のフィードバックだとしています。これをフィードバックではなく、フィードフォワードとよんでいます。

傾聴力テスト

みなさんは部下や同僚の話を何も言わずに聞いていますか。マーシャル博士は、この問いに対して、とっても簡単なテストを提案しています。それは何も考えずに、ゆっくりと1から50まで数えるということです。驚いたことにエクゼクティブの半分くらいはこれができないらしいです。20か30くらい数えると、他のこと、仕事の問題、家族のこと、はては昨日食べたもののことを考えてしまいます。同じようにエクゼクティブは人の話を聞くのが下手だというです。ぜひ、あなたの部下や同僚と話す機会があったら、「最後まで話しをさえぎらない」、「相手が話している間、集中する」「いいえ、でも、しかしという言葉を使わない」ようにしてみてください。

「コーチングの神様が教える「できる人」の法則」のほんの一部を紹介しました。実はこのタイトルには違和感を持っていて、原題”What Got You Here Won’t Get You There”と意味がずいぶん違うことに戸惑っていました。無理に解釈すれば、「できる人」というのはThereがどこであるのかを明確に知っており、そこにたどり着くには、いままでと同じことをしてもだめで、自分を変える必要があり、自分を変えるには他の人の助けも必要としているということかと思います。この本を読んで、おそらく共感できる部分や、そうでない部分があると思いますが、共感できる部分に関しては、何らか行動を起こすことをお勧めします。そして行動を起こすのであれば、今日、その何かを始めましょう。